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伊勢物語 17・18・19

17
むかし年ころ音つれさりける人のさくらのなかりに見にきたりけれはあるし


 あたなりとなにこそたてれさくら花としにまれなる人もまちけり


返歌
 けふこすはあすは雪とそふりなましきえすはありとも花とみましや


現代語訳
もう何年も訪れてこなかった人が、桜の盛りに花見に来たので、その家の主人が詠んだ。


 あだなりと名にこそたてれ桜花
  年にまれなる人も待けり   


     すぐに行ってしまうという名で有名な桜の花は
       年に数えるほどしか来ないあなたでも、ちゃんと待っていてくれるのですよ


 返事の歌。
 今日来ずは明日は雪とぞ降りなまし
  消えずはありとも花と見ましや  


   今日来なければ、明日は雪になって降ってしまうでしょう
   たとえ消えずに残っていたとしても、それを花として見られるでしょうかね


感想
たまにしか訪ねてくれないお客が桜の盛りに久しぶりに訪ねてきたのでそのお話






18
むかしなま心ある女ありけり男とかういひけり女うたよむ人なりけれはこゝろみむとて菊のはなのうつろへるを折りておとこのもとへやる


 紅にゝほふはいつらしら雪の枝もとをゝにふるかとも見ゆ


おとこしらすよみによみける
 紅にゝほふかうへのしら雪はをりける人の袖かとそ見る



現代語訳
昔、半端な風流心を持った女がいた。男は女の近くに住んでいた。その女は歌を詠む人だったので、男の心を試してみようと思い、盛りを過ぎた菊の花びらの色は、白から紅や紫に変わり、その微妙な差を賞翫した。が変わっているのを折って、男の所におくる。


紅色が美しいところとは一体どこなのかしら
白雪が枝もたわわになるほどに、降っているのかとも見えますが



男は、素知らぬふりをして詠んだ。
   紅ににほふがうへの白菊は 
   折りける人の袖かとも見ゆ 


    紅色に美しい上に真っ白な白菊は
    
これを折って下さった美しい方の袖の色かとも見えますが



感想
白菊の香りにまたふわふわするようなあたかも雪のようだ
しかしその中は紅がさしている。





19
昔おとこ宮つかへしける女の方にこたちなりける人をあひしりたりけるほともなくかれにけりおなしところなれは女のめにはみゆる物からおとこはある物かとも思たらす女


 あま雲のよそにも人のなりゆくかさすかにめにはみゆる物からとよめりけれはおとこ


返し
 あまくものよそにのみしてふることはわかゐる山の風はやみ也とよめりけるは又おとこある人となむいひける



現代語訳
昔、男が、宮仕えしていた女のところで、女房であった人と深い仲になっていたが、暫くして男は行かなくなってしまった。同じ所に務めていたので、女の目には男の姿が見えるものの、男は女を無視しその存在すら否定しようとしている。女は



  天雲のよそにも人のなりゆくか 
   さすがに目には見ゆるものから 


       天雲のように、あなたは遥か遠くのものになって行ってしまうのですね
        そうはいうものの、私の目にはあなたのお姿が見えているのですよ


と詠んだので、男は歌を返した。
  天雲のよそにのみして経ることは
   わが居る山の風はやみなり 


   天雲が、あなたから遥か遠くにしかいないのは
   私がいつもいる山の、風が激しくて近づけないからです


と詠んだのは、他に男がいる女だからだ、と噂だった。




感想
恋仲にはなったもののいつの間にか往来はなくなった男女の関係
そして浮気をしてしまった。男は心が去ってしまった

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